KLASSE通信 第11号 2021/6/15
藝高合格おめでとう特集
今年の藝高受験では二人の生徒さんが受験に挑み、二人とも合格いたしました。そこで、二人の受験生に質問してみたいことを募集したところ、たくさんの方から色々な質問をいただいたので、その中でも、複数の方が興味をもっていた質問にしぼって、答えていただきました。
質問に答えてくださったのは以下の二人です。
私の思い出とともにご紹介します。
♂くんは2015年11月(小学4年)に、「今回のコンクールは絶対に一位しかとれないので、レッスンしてください。」と、ドビュッシーのピアノのためにのプレリュードを持っていらっしゃいましたが、決意の通りに第一位に輝くだけの努力のできる少年でした。小学6年の時はコンクールに一切出場しないで、あるスポーツ少年団のキャプテンとして責任を背負いながら、こつこつピアノにも取り組むという一年を過ごしました。その後も運動とピアノの両立は課題ではありましたが、持ち前の誠実さと、身体能力に助けられながら最後まで希望を持って頑張ったと思います。小学生の頃はリズム感のあるノリノリの曲がぴったりの少年でしたが、中学に入ってからは、音楽の神髄をとらえて自分の心の奥に落とし込んでいく作業を、粛々と時間をかけて取り組む青年に成長したと思います。
♀さんは2017年5月(小学6年)に初めてレッスンにいらっしゃいました。レッスンに来るたびに目をきらきらと輝かせて、一音(一言)一句も逃さないで自分のものにする! といった、気迫を感じました。もともと賢く、興味を持ったことはなんでも吸収して、努力を努力とも感じないで楽しみながら取り組むことができる子なので、自分の意志で目標を決めると、ぐっと成長しました。感情も激しく音楽的な分、その感情をコントロールすることが課題でしたが、入試の一か月前までは、受験だと感じさせないくらい、ピアノを弾くのが楽しそうに見えました。こんなに楽しそうに受験に挑む子は見たことないと思ったほどです。でも、入試が終わった後に彼女のそばに立ったら、きれいな長い髪の毛の中にたくさんの白髪を発見して、あんな笑顔の中にたくさんのものを抱えていたんだなと思いました。
【幼いころのこと、または全般】 ピアノをはじめたきっかけを教えてください。 ♂くん 通っていた幼稚園が「小さい時から本物の音に触れて欲しい。」という教育方針で、ヴァイオリンかピアノを学ぶことを勧めていた。両親は「ヴァイオリンはお金が掛かる楽器だし、家にピアノがあるからピアノで良いんじゃない?」と単純にピアノを選び、習うことになった。 ♀さん 習い事の一つとして音楽教室のグループレッスンに通い始めたこと。 藝高を目指すようになったのはいつですか。きっかけは何ですか。 ♂くん 小学3年の時、ひょんなことがきっかけで藝大卒のプロのピアニストと巡り会い、教えてもらったことがきっかけで「自分も同じようになりたい。」と思った。 ♀さん 中学1年の冬、ピアノとの向き合い方、自分の進路についた考え始めた時、「将来どんな職業についたとしても、音楽を続けたい」と思ったこと。 勉強との両立で工夫したことは何ですか。 ♂くん 時間配分を自分なりに決めて、メリハリをつけて生活をした。 ♀さん 学校からの帰宅後、21時半まではピアノ、22時からは勉強と決め、生活のリズムを作った。休日は1日の時間割を作り、その時間に沿って集中してやった。 どのようなことに気を付けて練習しましたか。 ♂くん 苦手な部分や弾けないところを出来るだけ無くすように練習した。 ♀さん 無駄な時間を無くすこと。 【課題曲(9月中旬)が出てから試験まで】 学校にはいきましたか。 ♂くん 受験の1週間前まで行き、受験が終わるまで休んだ。 ♀さん 2学期までは欠席なし。3学期に入ってからは、試験までほとんど行かず、週に1日程度、午前のみ行った。(家に籠っているとストレスが溜まってしまう為)受験後は、毎日通った。 練習時間は平均何時間でしたか。 ♂くん 3~4時間。 ♀さん 部活をやっていた頃は、平日2〜3時間。休日4〜5時間。 部活引退後は平日4時間、休日6〜7時間。 3学期からは平日、休日7時間。 どのようなことを心がけて生活しましたか。 ♂くん 早寝早起き、たくさんご飯を食べる。 ♀さん 明るい心、日常の笑顔と思いやり。 毎晩、「合格します」と神様に宣言した。 「落ちる」という言葉に敏感になり、落ちたものは他の人より先に拾うようにしたw 学科試験の対策はどのようにしましたか。 ♂くん ・過去問を2回解いた。数学は答えが載っていなかったので、学校の先生にお願いをして答えを用意してもらった。 ・実際の試験は英語のリスニングが難しく、国語は文章問題が長く読むだけで精一杯、数学は基本的な問題だったが2教科に比べて難しかった。 ♀さん 中1からずっと学校の定期テスト勉強をしっかりやった。特に藝高対策はしていない。藝高の過去問は、前日に解いた。 ソルフェージュの対策はどのようにしましたか。 ♂くん ・2週間に1回ジュニア・アカデミー、地元の先生のレッスンを受けた。 ・本番は広いホールで試験だったこともあり、音が響いて聴き取りづらかった。 ♀さん 近くの音楽教室に通った。通信教育(パンセ)をやった。 初見視奏、新曲視唱の対策について、 おすすめの教材などがあったら教えてください。 ♂くん ・どちらも5、6年分の過去問をやった。 ・ヤマハの所見練習曲集、ピアノ演奏グレード、バロック小曲集などを使った。 ♀さん 初見視奏は、幼い頃の曲集(やったことのない曲)を初見の練習に使った。 入試のために利用したコンクールや本番練習の機会を教えてください。 ♂くん ピティナ・ステップ、髙橋先生のおさらい会、受験生同士の弾き合い会、ピアノ教育連盟の動画審査、地元のホールを借りる、など。 ♀さん k pianoコンクール kジュニア&学生音楽コンクール 日本クラッシック音楽コンクール ソナタコンクール 試験前に全ての課題曲をコンクールで弾く機会を作った。 併願校はどこですか。 ♂くん 地元の県立、私立の高等学校を考えていたが、藝高に合格したのでいずれも受験しなかった。 ♀さん 宇都宮短期大学付属高等学校。 当日落ち着いて演奏するために、気を付けて練習したことは何ですか。 ♂くん ・本番はかなり緊張するので、間違っても立ち直れるように通しの練習を繰り返し行った。 ・ゆっくり丁寧にさらい、心配なところがないように練習した。 ♀さん 弾き始める前のルーティーンを作った。 前日はどのように過ごしましたか。 ♂くん ・朝、シャッキリ起きられるように早く寝て、しっかりご飯を食べた。 ・ゆっくりの練習をたくさんして、通しで弾きすぎないようにした。 ♀さん 実技試験の前日は、練習室を借り、残りの時間はホテルでダラダラ過ごした。ソルフェージュの前日は、苦手な初見視奏の特訓と楽語の確認、今までに間違えた問題の解き直しをした。学科試験の前日は過去問を解き、英語のCDをかけながら寝た。親と面接の練習もした。 入試で一番苦労したことは何ですか。 ♂くん 本番はかなり緊張したので、いかに冷静な状態でいられるかが勝負だった。皆、同じところで待機するので他の人に気を取られないようにした。入試期間は少しでも気を抜くと体調を崩したりするので気を張って生活していた。 ♀さん メンタルを保つこと。 【試験中】 試験会場の響きとピアノの状態を教えてください。 ♂くん リスト会場…部屋の大きさの割に響く。思ったより暑かった。 ベートーヴェンの会場…大きなホールでとにかく響いた。ペダリングを意識した。 ♀さん リスト会場…ポロポロ響き、乾燥気味だけど、滑らかな音。表現が出しやすいスタインウェイ。軽め。 ベートーヴェンの会場…響く。透き通った音。弾いてて楽しくなるちょうどいい響き。軽め。 面接で何をきかれましたか。 ♂くん ・中学校生活で頑張ったこと(ピアノ以外で)。 ・遠距離通学となるが、通う自信があるか。 ・朝、早起きするのは得意か。 ♀さん 1人目の先生に「試験はどうだったか」 2人目の先生に「中学校でピアノ以外に何を頑張ってきたか」 3人目の先生に「学校には何時間で着くか」「学校にはどうやって来るか」 「通学に時間がかかるが、どうやって練習時間を確保するか」 持っていくと良いものはありますか。 ♂くん 受験票、防寒対策に必要なもの、気合い。 ♀さん コート、時計、ハンカチ、カイロ、お守り。 【実技試験の流れとアドヴァイス】 前日に試験日の集合時間が発表 当日時間までに控室に到着…想像以上に暖かい♂くん 呼び出されて練習会場で10分練習…何を弾くのかをきちんと決めておく♂くん 練習後そのまま本番会場に移動すると、前の人が弾いている 入室 係りの人が受験番号を試験官に伝えるので、自分はお辞儀をして演奏するだけ 試験官はA課題は6人、B課題は5人 演奏後帰宅 (♀さん 試験中の全ての期間、私語禁止。大学の入り口からは入れないため、高校の正門に回らないと行けない。門の先は受験生しか中に入れない。) お忙しい中、たくさんの質問に答えてくださってありがとうございました。
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